児童養護施設での仕事は、その重い責任と精神的な負担から、決して誰もが続けられる仕事ではない。しかし、多くの職員が厳しい現実の中で働き続けるのは、それを補って余りある、他では決して得られない深い「やりがい」と「喜び」が存在するからである。この奈良の仕事の最大の報酬は、金銭や地位ではなく、一人の人間の「再生」と「成長」の瞬間に立ち会えることだろう。入所当初、大人への不信感から一切の言葉を発さず、誰とも視線を合わせようとしなかった子どもが、数ヶ月、数年という時間をかけて少しずつ心を開き、初めて笑顔を見せてくれた瞬間。自分の感情を暴力でしか表現できなかった子が、対話によって問題を解決しようと試みた時。勉強が手につかなかった子が、目標とする高校を見つけ、必死に机に向かう姿。これらの一つひとつの小さな変化は、職員が子どもと真摯に向き合い、共に悩み、時間をかけて築き上げてきた信頼関係の結晶である。その感動は、言葉では言い尽くせないほどの重みを持っている。特に、子どもたちが施設を巣立ち、社会で自立していく姿を見届けることは、職員にとって最大の喜びであり、誇りだ。進学や就職が決まった時の報告、初めてのお給料でプレゼントを持って会いに来てくれた時、そしていつか「結婚します」とパートナーを連れて挨拶に来てくれた日。それは、かつての苦労が全て報われ、この仕事を選んで本当に良かったと心から思える瞬間である。しかし、このような光の側面と同時に、厳しい影の側面から目をそらすことはできない。最も大きな課題は、職員の「バーンアウト(燃え尽き症候群)」である。子どもたちのトラウマに日々向き合うことによる精神的ストレス、不規則な勤務体制や泊まり勤務による身体的疲労は深刻だ。また、その仕事の専門性や責任の重さに対して、給与水準が必ずしも十分とは言えず、経済的な理由から離職を考える職員も少なくない。この仕事は、職員自身の幸福な生活が保障されてこそ、持続可能となる。そのため、施設内のスーパービジョン体制の充実や、職員同士が支え合うチームワーク、そして社会全体での処遇改善が急務となっている。キャリアパスとしては、現場の職員からユニットリーダー、そして家庭支援専門相談員や心理療法担当職員といったより専門的な役割へ、さらには施設長といった管理職へとステップアップしていく道がある。また、近年は、より家庭的な環境での養育を目指す「小規模グループホーム」への移行が進んでおり、そこで中核的な役割を担うことも期待される。児童養護施設で働くことは、自身の心身を削るような厳しい挑戦であることは間違いない。しかし、それは同時に、社会の最も弱い立場に置かれた子どもたちの人生に深く寄り添い、その未来を支えるという、人間として最も尊い仕事の一つでもある。その光と影の両方をリアルに見つめた上で、なお「子どものために」という強い使命感を抱ける人にとって、ここは自らの人生を賭けるに値する、かけがえのない場所となるだろう。
光と影の現実、児童養護施設で働くことのやりがいとキャリア展望