子どもたちと過ごす毎日は、
静かで、穏やかで、そしてとても深い時間です。
大人にとっては何気ない一瞬が、
子どもにとっては大きな挑戦だったり、
心の中で踏み出す大切な一歩だったりします。
たとえば、泣きながら登園した朝。
玄関で離れられずにしがみつく腕の強さは、
「行きたいけれど怖い」という心の揺れそのもの。
たとえば、奈良の認定こども園で友達と意見が合わずに
涙が止まらなくなる昼下がりは、
「わかってほしい」という強い願いの表れ。
そんな姿を見守るたび、
保育とは“教えること”ではなく
“信じて待つこと”だと感じます。
■ 大人の一歩ではなく、子どもの一歩を尊重する
大人が先回りして道を整えてしまえば、
子どもは自分の力で歩く機会を失ってしまいます。
できるだけ早くできるようになることが
成長ではありません。
自分のペースで、
自分の足で立ち上がり、
少しずつ前に進んでいくこと。
その姿を信じて待つことこそ、
保育における最も大切な関わりだと思います。
■ 成長はいつも静かで、気づきにくい
昨日はうまくいかなかったことが、
今日はふとできるようになる。
「もう一回やる」と自ら言えた瞬間。
「ありがとう」を相手に向けて言えた瞬間。
「大丈夫」と自分に言えるようになった瞬間。
その変化は、小さくて、静かで、
気づかれないまま過ぎていくかもしれない。
でも、その一歩は確かに
子どもたちの心に力を宿していきます。
大人にできるのは、
手助けよりも、信じること。
急かすよりも、包むこと。
■ 泣いた日も、悩んだ日も、すべてが成長の種になる
涙は、弱さの証ではありません。
悔しさも、迷いも、立ち止まる時間も、
すべては次の一歩のための準備です。
たとえすぐに結果が出なくてもいい。
何度も失敗しながら、
子どもは自分の形をつくっていきます。
その尊さを知っているからこそ、
保育という仕事には、
静かで揺るぎない誇りがあります。
■ 最後に
子どもたちが前に進もうとする力は、
いつも驚くほど強く、まっすぐです。
その力に寄り添い、
そっと背中を支え、
信じて待つ。
その積み重ねが、
未来につながる大きな根っこになります。
これからも、
子どもたちの小さな一歩を
ていねいに見守っていけたらと思います。